このブーツ、やばいです。
出会いは突然に
いつものようにインスタを徘徊していたところ、フォローしているT.Shirakashi Bootmakerさんの投稿に目が留まります。曰く、UNITED ARROWSのリクエストにより、初の既成靴をリリースすると。
丁度ここ最近、ブーツ欲が湧いていたのでT.Shirakashi BootmakerでMTOでもお願いしようかなと思っていた矢先のニュースでした。これは買えという天の計らいか?
しかし、冷静な のすけ は考えます。白樫さんに直接フィッティングしてもらえて、アッパーも選べるMTOのほうが満足感高いのでは?Royasはグレインカーフだけど、のすけ はシボ革あんまり好きじゃないよね?販売してるの六本木の店舗だけみたいだし、行くのちょっと面倒くさくない?
とかなんとか色々と言い訳しながら、いったんこの件は忘れることにしました。数も多く作ってないだろうし、しばらくして売り切れれば諦めもつくだろうと。
そしてRoyasの発売から約1ヶ月後、ほんとにたまたま六本木に行く用事ができます。最後に六本木行ったのなんて5年前くらいなのに。
どうせ六本木来たならついでにUNITED ARROWSも覗いてみるか。たぶんRoyasは売り切れてるだろうけどね。念の為、一応ね。
そしたらなんと、マイサイズが残ってたんですよねぇ。しかも履いてみたらめちゃくちゃ良い。これはもう買うしかないのでは?
しかし、冷静な のすけ はもう一度考えます。やっぱりMTOも捨てがたい、ほんとにRTWでいいのか?と。
とりあえず頭を冷やそうと思い、電話で取り置きをお願いできることを確認してその日は一度帰りました。
でも、どうにもRoyasのことが頭から離れません。誰がどう考えたっていい靴なんですよ。
そして次の日、スマホを握ってこう言ってました。「取り置きをお願いしたい商品があるんですけど…」。
T.Shirakashi Bootmakerとは
その名の通り、カントリーブーツのビスポークを中心としたブランドです。
最近は短靴のドレスシューズやMTOによるオーダーも受け付けているようですが、RTWは今回のRoyasが初とのこと。
ブランド自体は以前からインスタでも知っており、横浜在住の身としてはいつかオーダーしたい候補にリストアップしていました。ブーツはもちろんのこと、外羽根のドレスシューズも気になります。ドレッシーなのにカントリーな雰囲気も纏ってて相当にかっこいいんですよね。
なお、2025年1月現在、ビスポークの新規オーダーは受け付けていないようなのでご注意ください。※将来的な予約はできるみたいですよ。
さて、完全に余談ですが、白樫さんのアトリエは横浜の山下公園の近くにあるインペリアルビルというレトロモダンなビルの一室にあります。

このインペリアルビル、革靴とは因縁浅からぬ建物です。UNION WORKS 横浜店も入居しており、ギャラリーでは、京都の靴職人、曽山 健太郎さん(Kentaro Soyama)のトランクショーも年2回くらいのペースで開催されています。
のすけ もちょこちょこ訪れてるんですが、近代的な外観に反したクラシカルな内観がとても素敵な建物。外国人専用のアパートメントホテルとして建設されたということもあり、中に入れば異国の空気が流れるレトロモダンな情緒溢れる空間が広がります。
のすけ は、建物としてインペリアルビルが好きというのもあるので、何かしらの理由をつけては積極的に足を運ぶようにしています。皆様も近くをお通りの際はぜひ訪れてみてください。
T.SHIRAKASHI BOOTMAKER for SOVEREIGN Royas
前置きが長くなりましたが、ようやく本題です。

Royasはユナイテッドアローズ35周年のプロダクトとして、T.Shirakasi Bootmakerにリクエストして制作された、同ブランド初の既成靴です。

カントリーブーツを得意とする白樫さんらしく、キャップトゥに外羽根、外鳩目で上2つがフック、グレインレザーと王道のカントリーブーツ仕様です。ただ、コバの張り出しが抑えられ、甲が低く設計されているので、カントリースタイル特有の野暮ったさは一切感じません。

コンセプトは、貴族のためのカントリーブーツ。昔、ジョンロブなどガチガチのドレスシューズブランドが作っていたブーツを目指されたとのこと。だからこんなに美しいのですね。
アッパーはワインハイマーのデッドストックで、色はダークピート(モカブラウン)とアメリカーノ(ダークブラウン)の2色展開です。モカブラウンも絶妙な色味でかなら魅力的だったのですが、より合わせやすそうなダークブラウンを最終的にはチョイス。
サイズはUK7にしました。カントリーブーツだからか、一般的なドレスシューズに比べるとゆとりのあるサイズ感。普段からハーフサイズ下げてジャストという方が多そうです。

計算された木型
Royasの作成にあたっては、新しくRTW用に木型を作りパターンを引かれたとのこと。この一点でも並々ならぬこだわりを感じます。
最大の特徴は低く抑えられた甲周り。

基本的にブーツは厚めの靴下で履かれることを想定して木型が設計されることもあり、特に海外ブランドのものは甲が高めに設計される傾向にあります。のすけ は甲が低めですし、厚い靴下もあまり好きじゃないので、甲のフィッティングに満足する既成靴にはほとんど出会えませんでした。
その点、Royasに関して言えば既成のブーツとは思えないほど甲が低く設計されています。ただし、幅は比較的ゆとりがあるので、甲をしっかりと抑えつつも快適なフィッティング。

踏まず側もブーツとしてはかなり絞られており、足首から甲にかけてしっかりとホールドしてくれます。

ヒールカップは小振りで洋梨型。ブーツなので足首さえホールドできていればカカトが浮くことはなさそうですが、Royasはカカトのフィッティングも怠りません。こうして見ると後ろ姿も優美ですね。
Royasの製作にあたり最もこだわられたのが、並行に羽根が開くことだそうです。

パターンの設計段階からかなり計算されたようで、簡単なようでいて並のことではありません。既成とは思えない作り込みです。
ワインハイマー社のデッドストック
アッパーは先述の通り、ワインハイマー社のデッドストックであるグレインレザーが使用されています。
グレインレザーがあまり好きでない のすけ ですが、Royasにはシボ革がベストでしょうね。

カントリーブーツらしく一見すると重厚感のあるレザーですが、履いてみると驚くほど柔らかい。
シボも小振りなため、どことなく上品な雰囲気です。

特筆すべきは甲周り。強く釣り込んだためにシボが薄くなることも多いですが、Royasはしっかりと凹凸が残っています。
惜しむらくは今回のロットで革は使い切られたとのこと。この革でもう一足くらい仕立ててみたいものですが、最終ロットを手に入れられただけでも幸運でしょう。
その他デティール

Royasの顔とも言えるキャップトゥですが、ダブルステッチとシングルステッチの計3本となっています。ダブルステッチが2つだと無骨すぎ、シングルステッチが2つだと少しつまらないと思うので、この組み合わせが最適解でしょう。

ブーツの良いアクセントになっているのが、羽根に入った白いステッチ。さりげなく主張することで、全体が締まって見えます。

もう一つアクセントになっているのが、内側に入った毛鉤のステッチ。目立たない場所ですが、目を引く緑色が素敵です。こちらは白樫さん自ら一足ずつ縫い付けられたとのこと。ありがたや。

ソールはみんな大好きリッジウェイ。現代のカントリーブーツにおいて、これほど理想的なソールはないでしょう。濡れたアスファルトも、ぬかるんだ獣道も気にせず歩いていきます。

上2つのフックにはドイツ製のヴィンテージが使用されています。ホントに細かいところまでこだわって作られていますね。

シューバッグにはT.Shirakashi BootmakerとSOVEREIGNそれぞれのロゴが縫い付けられています。起毛した触り心地の良い、深緑の高級感あるシューバッグで、靴以外でも満足度の高まる仕上がり。外堀から埋められていってます。
履き下ろし
我慢できず、いつも通り3日間プレメンテの後、早速履き下ろし。

履き始めから足馴染みがよく、リッジウェイにも関わらずしなやかな履き心地。革が柔らかいということもあるかと思いますが、足首から甲にかけてしっかりとホールドされているのに、全く窮屈に感じません。
甲も低く抑えられているものの、横方向はゆとりがあるので快適なフィッティングです。

羽根の開きもキレイに並行です。こうして見ると履いたときにこそ美しさが完成するように感じます。靴としては最高ですね。
まとめ

白樫さんとSOVEREIGNの拘りが詰まった渾身の一足。
手の出しにくい価格帯だとは思いますが、完成度に比べたら破格だと思います。このクオリティの既成靴自体が稀有ですし、このご時世ではとても20万円以下では手に入らないでしょう。
のすけ は完全に白樫さんにやられてしまったので、俄然ビスポークとMTOにも興味が湧いてきました。
今回のプロダクトには、ビスポークへの足がかりとなれば、という思いもあるようなので、まんまと思惑に乗っかってしまっています。でも抗うのは無理ですよ。
今回に限らず、継続してRTWをリリースする計画もあるようなので、興味ある方は機を逃さないようお気をつけください。
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